「肯定」しているつもりで、実は部下を追い詰めていた…
「いや、君の言いたいことは分かるよ。でもさ…」
かつての僕は、これが部下を励ますための『肯定』だと信じて疑いませんでした。でも、結果は惨憺たるもの。僕がそう言うたびに、部下の表情は曇り、やがて視線は宙を彷徨い、最後には無言でデスクに戻っていってしまう。当時の僕は「せっかく話を聞いてあげているのに、なぜ分かってくれないんだ」と、自分の不甲斐なさを棚に上げて、部下の理解力不足を嘆いていました。
でも今なら分かります。あれは『肯定』ではなく、ただの『否定の隠れ蓑』だったんです。僕がやっていたのは、相手の意見を「受け止めたフリ」をして、結局は自分の正論に引きずり込む作業でした。これじゃあ、部下の心が開くわけがありませんよね。人間関係って、本当に難しいものです(汗)。
「肯認」と「肯定」は、天と地ほど違います
心理学を学び直し、左遷の危機を乗り越えた今、僕は『肯認(こうにん)』という概念を大切にしています。ただ「そうだね」と言うだけの肯定ではありません。相手の存在そのもの、その人が抱えている葛藤のプロセスそのものを、「認める」こと。これができて初めて、部下は「この人は自分の味方だ」と感じてくれるんです。
人は理屈じゃ動きません。「私のことを理解しようとしてくれている」という安心感があってこそ、初めて心に火が灯るんです。僕がかつて陥った「上司のゴマすり」や「部下への強制」は、すべてこの『肯認』の欠如から生まれていました。
空回りしないための「肯認」フレーズ
では、具体的にどうすればいいのか。まずは、相手の言葉を遮らずに、その感情に「呼応」することから始めてみてください。
詳しくは、「呼応」がズレてる?部下との会話で絶望した僕が学んだ、一瞬で心が繋がる魔法の相槌でも触れていますが、相槌一つで相手のガードは驚くほど下がります。
「肯認」を実践するステップ
- 1. まずは「事実」をそのまま繰り返す:「なるほど、今回は納期が厳しいと感じているんだね」と、相手の言葉をオウム返しする。
- 2. 感情にラベルを貼る:「それはプレッシャーに感じるよね」と、相手が抱えている感情を言語化してあげる。
- 3. 存在を肯定する:「その視点を持てるのは、君が真剣に仕事に向き合っているからだよね」と、その人の姿勢自体を認める。
これだけで、空気は一変します。以前の僕は「とにかく早く解決策を出さなきゃ」と焦るあまり、相手が話し終わる前に「それはね…」と自分の意見を被せていました。でも、部下が求めていたのは解決策よりも先に、自分を「認めてもらう」ことだったんです。
不器用な僕だからこそ伝えたいこと
何度も失敗し、上司には呆れられ、部下には離れられ、本当に地獄のような時期がありました。「自分にはマネジメントなんて向いていないんじゃないか」と、何度も辞表をポケットに入れました。でも、この『肯認』という小さなコミュニケーションの技術を知ってから、周囲の目が少しずつ変わっていったんです。
魔法のフレーズなんて、大それたものはありません。ただ、相手の言葉を否定せず、一度自分の心の中に「余白」を持って受け止める。それだけで、人間関係の摩擦は劇的に減っていきます。もし今、あなたが部下との距離感に悩んでいるのなら、まずは今日から「否定の言葉」を飲み込んで、相手の言葉を「そのまま認める」練習をしてみてください。不器用な僕でも変われたんですから、あなたなら絶対に大丈夫です。
さあ、明日からは少しだけ、部下の言葉をそのまま「肯認」してみませんか?案外、今まで見えなかった部下の隠れた才能が見えてくるかもしれませんよ。
